2024年12月14日に名古屋で開催された第50回東海花粉症研究会での発表内容です
耳鼻咽喉科みやこクリニックでは、来春(2025年春)のスギ花粉飛散数は、2月と3月の降水量が150㎜未満であれば例年より多く約4,000個/㎠以上、150㎜以上なら3,000個/㎠で例年並みと予測しました。
本年のスギ花粉飛散総数は2,878個で、例年を400個ほど下回りました。昨年夏が花粉生育に良い条件でしたので、6,000から7,000個と大量飛散を予測しましたが、結果は半分以下でした。飛散開始は2月14日、ピークは遅く3月18日の324個と少ない結果でした。ヒノキ花粉飛散総数は2,598個で、例年よ700個ほど多く、飛散開始は例年並みの3月26日、ピークは遅く4月14日の309個でした。
スギの予測が下回った原因として2月と3月の降水量が多かったことがあげられます。2月19日に43㎜、3月12日に47㎜と、飛散開始やピーク時期に一致して雨が降り、スギが飛べなかったと考えられます。3月26日に58㎜、4月9日にも58㎜とヒノキの飛散開始やピーク時期にも一致して雨が降りましたが、ヒノキは例年以上に飛んでおり、晴天であればさらに多かったと推測されます。
今年の2月と3月の降水量の合計は、私が花粉観測を始めて以来、最も多い結果でした。右のグラフから、大量飛散年の降水量は150㎜程度であることが分かります。
2009年からの飛散結果と降水量です。スギ花粉の平均値は3,283個、ヒノキは1,903個、降水量の平均値は204㎜です。スギ花粉が6,000個以上飛散した2011年、2013年、2019年は、2月と3月の降水量を示す黄色の折れ線グラフが谷となっており、122~157㎜と少な目であったことが分かります。一方で今年の降水量は352㎜と特に多かったことが示されており、大量飛散年同様に150㎜程度の降水量であれば、実測値の倍以上、飛散したかもしれません。
7月と8月の日照時間を降水量で割った指数を縦軸に、日照時間を横軸に、過去16年をプロットしますと、2つの群に分かれます。日照時間が多く-降水量が少ない花粉生育-好年群では、翌年春の花粉数が4,560個、もう一方の悪年群は2,289個で、t検定にて有意差を認めました。好年群の7年のなかで、翌年の花粉数が平均以下の年が3年あり、χ2検定にて有意差はでませんでした。好年群の翌年は平均以上飛散し、悪年群翌年は平均以下という相関は成り立ちませんでした。この理由として、好年群の翌年に降水量が多かった年が2年あり、飛散が抑えられた可能性が考えられます。2024年の7月8月は好年群に属しましたので、来年-春の降水量が150㎜未満なら4,000個を超える飛散に、150㎜以上なら今年同様3,000個以下になる見込みです。
11月のスギ花粉数が、今年は15年間で最高値でした。降水量は3番目に多く、最高気温は2番目に高く、日照時間は11番でした。11月の花粉数と翌春の飛散数は相関しませんが、このような気象条件下で、11月のスギ花粉数が最高値であったことは、今年の花粉の出来が良い可能性が高いと考えられます。
上のグラフで、これまでのスギ花粉-飛散開始日とピーク日の推移を示しました。ピンクの飛散開始日の近似線はやや右肩下がりで、飛散-開始時期が早まる傾向を認めます。飛散開始日を平均すると2月18日でした。赤色の飛散ピーク日の平均は3月9日でした。下のグラフは、元旦から飛散開始日までの一日の最高気温合計の推移です。近似線はやや右肩上がりで、飛散開始日までの気温は高まる傾向にあります。平均値は461℃ですが、ここ3年は490℃を上回っております。飛散開始日が早まる傾向にもかかわらず、気温は上昇しており、温暖化の影響が考えられます。
ヒノキ花粉 飛散開始日と 飛散ピーク日の 推移を示します。飛散開始日は平均3月24日、ピーク日は4月6日で、ともに早まる傾向を認めます。